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Love adventure
第11章 セレナーデを弾くように
 ーー彼の温もりが現実なのかを確かめたい。
 ほなみは、彼の真っ直ぐな前髪に触れる。そこにあるふたつの瞳が妖しい色の焔を宿しているのに気付いた時、ふわりと身体が軽くなった。
 いつの間に、抱き上げられている。

「……ベッドは何処?」

 その低い声が意味する彼の望みを察し、ほなみの心臓が激しく鳴り始める。
 胸の痛みと沸き上がる涙が、これは夢では無い、と教えていた。

「ダメ……」

 ほなみは震える手足をばたばたさせた。彼はすぐに寝室のドアを捜し当て、中へと入る。
 ほなみはベッドにそっと降ろされ、身を起こす暇も与えられずに両の肩を強く押された。ベッドへ沈んだほなみと西本は一瞬熱く見つめあう。

「……雷、平気?」
「今は平気……」

 首筋にキスされながら、くすぐったさに耐えられず身をよじる。彼の腕は細いのに物凄い力で押さえつけられて、身動きが出来ない。

「こ、怖い……」
「何が?」

 彼は、唇で胸の先端を捜し当てると、薄いパジャマの上から『ちゅっ』と音を立てて口付けた。

「あ……そんなのっ……」

 敏感な場所を刺激されて、ほなみの柔らかい、智也にしか開いたことのない場所が熱く溢れ出そうとしていた。

「俺が怖いの?」

 西本は胸から顔を離し、静かに問い掛ける。
 彼の瞳の色は硝子のように澄み、何も邪心や欲などないかのように見える。だが、彼の中に猛々しく渦巻く熱を、ほなみは感じ取っていた。
 



 ーーその熱が向かっているのは、この私なのだ。
 ふわふわして、嬉しくて……そして、とても恐ろしい。
 憧れの彼に抱き締められて、口づけられてーーそんな甘ったるい夢を見ていられるだけでも幸せな筈なのに、もっと、と心の奥で叫んでいる自分がいる。
 
 走り出そうとしている自分の気持ちが怖いの……と、喉まで出かかった言葉を呑み込んだ。





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