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第80章 甘い家路

　西本はもちろん、クレッシェンドのメンバーや、浜田や綾波が見舞いに来て、入院生活は賑やかだった。
　六日にはあぐりがこっそりとやって来た。

｢あぐり……！｣

　びっくりするほなみを、あぐりはいきなり抱き締めてワンワン泣いた。

｢――テレビで見て……心臓止まるかと思った……ごめんね～！すぐに来れなくてごめんね……！｣

　子供みたいに泣くあぐりの背中を叩きながら、聞いてみた。

｢今、どこにいるの？別居……したのよね？｣
｢うん。離婚届けは送ってあるの。さっさと旦那が判を押してくれればいいんだけどね｣
｢――えっ！そうなの？｣

　あぐりは、意外とさっぱりした表情をしていた。

｢もう複雑な事は面倒だからしない。懲りたわよ｣
｢―― 稲川さんの事は、いいの？それに……野村君も心配してたよ？｣

　あぐりの瞳が一瞬揺れた。