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Love adventure
第14章 夫の帰国①
 ほなみは何日か振りに外へ出て、エントランスに立ち、見慣れた街並みをしばし眺めた。
 2月半ばの今日は暖かくまるで春のようだ。
 通りを行く人も上着を脱ぎ、手に持ち歩いている。
 街は前と変わらない姿をしているのに、此処に居る自分だけが、何故かそぐわない気がする。

(――西君と出会って私が変わってしまったから……?)

 買い物のために駅方面に足を向け歩いていると、どこからか叫ぶ声が聞こえてきた。

「……ちゃん……ほなみちゃーん!」

 ギョッとして振り向くと、大通りの反対側のcallingの前で、浜田とクレッシェンドのドラマーで女の子のように可愛い顔の――確か三広。そして、亮介。
 その面々が一斉に叫んだ。

「ほ――な――み――ちゃ――ん!」

 男たちの声が響き渡り、往来の人々がじろじろ見ている。
 ほなみは困ってその場に立ち尽くした。
 道の向こうで3人は賑やかに何かを言い合っていたが、三広が駆け出した。
 三広は信号を渡り、こちらに向かって来ている。
 茶色の綺麗なマッシュの髪を揺らし、もの凄い速度で走って来る彼から、ほなみは反射的に背を向け逃げ出した。



「ほなみちゃーん!ちょっと……待って――!」

 良く通る声が後ろから迫ってくる。
 街中をパンプスで全速力で走るには無理があるし、三広の足が速すぎた。
 あっという間に追いつかれ先回りされてしまう。
 息を乱してへたり込むと、彼は白い綺麗な手を差し出してほなみを立たせた。

「大丈夫?」

 全速力で走っても三広のマッシュの髪は乱れる事なく、綺麗な形に戻どおりだ。
 よく考えてみたら、ほなみが本気で走ったのは高校生の時振りなのだ。
 少しダッシュしただけで、もう息が上がり心臓がバクバク苦しい。

(……なんて情けない)

 ほなみは呼吸を整えるのに必死だが三広は息ひとつ乱さず、ニコニコ笑った。

「この間のライヴ以来だね?」


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