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花の踊り子
第2章 開演
結婚の話をされると、なんだか照れてしまう。
しかし今は、夫は単身赴任中で独身のようなものだ。

「花ちゃん、綺麗だもんねえ。男の人が放っておかないよね」

「いえ、そんなことは…余り物を拾ってもらいました」

ふと視線を泳がせると、なぜかまた、爽やか会社員と目が合ったが、今度はあちらから逸らされてしまった。

「旦那さんは花にぞっこんだったんですよ!」

なぜかユキが自慢げに胸を張っている。

「そんなことないってば!」

「ユキちゃんは?彼とかいるの?」

「いえいえ、わたしは仕事一筋で寂しくやってますよー!」

話がユキに映ったようなので、花はトイレに行くことにした。

「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね。」

花はタオルを持って立ち上がる。
入り口のドアのところで、数人が立ち話をしていたので、軽く会釈をして通り過ぎようとすると、いきなり髪を引っ張られた。

「痛っ!」

何事かと思い、まだ髪が引っ張られたような状態のまま振り返ると、
「あー!ごめん、引っかかっちゃってる。ちょっと待って」

爽やか会社員の朝比奈さんのスーツの袖のボタンに髪の毛が引っかかってしまっていた。

「すみません!すぐに取りますから」

慌てて花が言うと

「ちょっと動かないでね。」

朝比奈さんはスーツのジャケットを、花の髪が引っ張られないように慎重に脱ぐと、ボタンから髪を外そうとしてくれる。

「あの…髪切っちゃっていいですから」

頭が動かないので、横目でチラリと見て申し訳なさそうに花が言うと、

「ダメだよ。せっかくフワフワで綺麗な髪なんだから」

朝比奈さんは髪を引きちぎらないように丁寧に外してくれている。

「花ちゃんは彼氏いるの?」

落ち着かない気持ちで固まっていると、数人のうちの1人の男の人が話しかけてくる。

「あの、私結婚していて」

「えー!そうなんだ残念!でも人妻かぁ〜! 言われてみれば確かになんか人妻の色気を感じるかも!」

と、おちゃらけて言いながら、花の口元のホクロを指差した。

「おい、もうレッスンが始まるんじゃないか」

困っていると、朝比奈さんが助け舟を出してくれた。
見ると、休憩時間が終わるのでレッスン室に人が集まっていた。

「ごめん、ちょっと引っかかっちゃったから、先に始めてて!」

朝比奈さんがリサ先生に言ってくれた。
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