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花の踊り子
第3章 疑惑
次の日の夜、優も仕事が終わったであろう時間に、電話して、ダンススクールの事を報告することにした。
しかし、花の仕事の休憩時間に珍しく優の方から電話があった。

「もしもし?」

「もしもし優?どうしたの?こんな時間に」

優からの電話で、しかも昼間に電話がかかってきたことを不思議に思い、尋ねる。

「今度の土日にそっちに帰るから」

「え?そうなの?何時頃帰ってくるかな?土曜日は午前中仕事なんだけど、夕食は久しぶりに外食でもする?」

久しぶりに夫と過ごせることを嬉しく思い、花はわくわくしながら尋ねる。

「そうだね、久しぶりに外で食べよう。 昼ぐらいにはそっちに着くと思うから、駅まで迎えに行くよ。」

「ありがとう。 気をつけて帰ってきてね」

花は電話で話しながら思わず微笑んでいた。
(久しぶりに優と過ごせる…)



数日後の仕事終わり、花とユキはダンス用品のショップで唸っている。

「うーん、ダンスシューズといっても、いろいろ種類があるのね」

「ホント、どれにすればいいんだろうね? こないだもっとよく、みんながどんなシューズ履いてるのか、見ておけばよかったね」

シューズの事で悩んでいるようで、花はニコニコ楽しそうだ。

「ちょっと、今日会った時からずっとニコニコしてるのは何かいい事があったの?」

「え?ニコニコしてる?」

「花は顔に出やすいからね。優君でも帰ってくるの?」

「よくわかるね!そうなの、今週末こっちに来るんだって!」

優の話をする時の花は本当に幸せそうな笑顔になる。
初めは優の猛アタックから始まった交際だったが、付き合ってみると、優の優しさに花はどんどん惹かれていったのだった。
付き合っている時は、いつも一緒にいる2人だった。
優は、ユキと会う時にも時折、花に付いてくるほどだった。おかげで共通の友達も増えた。
それが単身赴任した途端、素っ気なくなったのは、どういうわけだろう。花が寂しそうにしているのは、ユキの目から見ても明らかだった。
ふいに花の目がユキの後ろに留まった。

「あ。」

「あれ?おふたりさん」

「あー!爽やかイケメン!こんばんは!」

仕事帰りと思われる朝比奈がダンス用品店に入ってくるところだった。今日も爽やかにスーツを着こなしている。

「おー。入会決めたのかな?」

「そうなんです。よろしくお願いします」


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