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第2章 開演

その男の人は目を見開き、こちらを見ている。

「…？」

目が合ったままで花が戸惑っていると、

「あー！朝比奈くん！今日レッスンないのにどうしたの⁉︎」

お姉さんが声をかける。

爽やかな男の人はハッとした様子で

「ロッカーに忘れ物しちゃって…」

と、ドアから入ってくる。

「朝比奈くんのスーツ姿って珍しい！会社から直接来たんだ！」

「あぁ、普段は一旦家に帰って着替えてからきてるからね。」

ダンススクールの生徒さんだろうか。
会社員の人もダンスやるんだな〜と、思っていると、

「あっ、今日ダンスの見学に来てくれた子たちなの。美人さんでしょ⁉︎2人とも、この爽やかイケメンも普段は生徒としてやってるんだけど、たまーに講師をやってるからよろしくね！」

「は、はい。よろしくお願いします」

「お願いします！」

2人はそろってペコリと頭を下げる。

「花、めっちゃイケメンじゃない〜⁉︎あんなかっこいい人に出会えるなんて、ダンススクール、いいかも〜！」

ダンスを始める動機が不純になっている。

「そうだねぇ。確かにイケメンかも。」

受付のお姉さんと爽やかイケメンが話してる姿を見ながら2人で話していると、ジャズの上級者コースのレッスンが終わったようだ。
中からレッスンを終えた生徒さんたちが出てくる。
それと同時に、気付くと、次の初心者コースの人たちだろうか、何人かロッカーで着替えを始めているようだった。

「あ、朝比奈くん来てたの⁉︎」

何人かが、さっきの爽やかな男の人に駆け寄っていく。

「なんか人気ありそうな人だね〜」

花はロッカーにバッグを置き、服装はそのままだが、とりあえず髪をひとつに結わく。

「でも花、あぁいう爽やかな人ってタイプじゃなかったっけ⁉︎」

「えっ⁉︎」

図星を突かれて口籠もる。

「でも私、もう結婚してるしな〜」

「優くんが単身赴任中にどうにかなっちゃったりして〜」

ユキはニヤニヤしながら、からかってくる。
適当にあしらいつつ、レッスン室に足を踏み入れた。

「は〜い！みんな〜！ こんにちは〜‼︎」

「リサ先生こんにちは〜！」
さっきの受付のお姉さんが元気よくラジカセを持ってレッスン室に入ってくる。リサ先生というらしい。

「今日は体験の子が2人来てるからね〜！よろしくね〜！」

「よ、よろしくお願いします」