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初花
第4章 猫柳
龍は 眼を見開き、息を詰めた後


「、、初恋を 喪うのは、世の常と聞きますが
貴子さまもですか」 彼女を見上げ、問うた



「ええ。 。 気の強い娘でしたから
お相手は わたくしから恋心を抱かれているなど
気付かれなかったでしょうけれど」



彼女の答えに、笑みのかたちを作った唇
懐かしげに遠くに向いた 琥珀の瞳は


「未練のせつなさではなく
幼い初恋を懐かしむ御様子でした」


今此の時の 哀しみを表しては居なかったらしい



_ _その様な遣り取りと、彼の様子を知り
私は 溜息を吐いた





「初恋、とは
それほどに 大切なものなのか?」


「特別なもの、と 申し上げた方が
正しいような 気は致します」









「そう言えば。 殿が贈られた 美しい白の毛皮を
先ほども 巻いていらしたのですけれど」


不意に 違う事を話す彼女に
目を向ければ


「可愛らしい御姿に 見惚れて、つい手を伸ばした私に
『殿も、これを巻いているときの わたくしを
優しい仕草にて 撫でてくださいます。
猫の様だからでしょうか』と 仰いました」


そして、そのとき龍の瞳は 甘やかであったと言う








「私以外 猫の様に龍を撫でても許されるのは
其方くらいの物だ」


「、、お許し頂き 有り難く」


呆れた風に笑んだ後、彼女は
龍を真似るかの様に空を見上げた。
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