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王子の甘い罠
第4章 甘
本当に迎えに来た。
6時近くになったころ、部の入り口が騒がしいなと思ったら
広報の王子が腕を組んでドアに寄りかかっていた。

「誰を待っているんですか?」
と、女の子の黄色い声が飛び交った

私がそっちを見ると目が合って。
ごゆっくり。と仕草で示した。

「まだ終わらないわよ~」

時間を約束したわけじゃない。
私が今日は忙しいのにこんなに早く迎えに来る方が悪い。

私のその声に、部内の女の子が
王子の目的は私だと知ると、昨日の噂と相まって
声に出さない驚きが伝わってきた。

「いつまでも待っていますので。ごゆっくり」
そう言う王子に椅子を差し出す人が出てきたけど
「結構です」と王子スマイルで辞退する。

やりにくいったらありゃしない。

「ねぇ。まだまだ終わりそうもないからどこかで待ってて」

私がそう言うと、にわかに女の子のひそひそ話が大きくなった。

「じゃぁ、僕のマンションで待ってます。
夕飯は適当にデリバリーでいいですか?」
「うん。いいわよ」

―――って!しまった。
そう自覚した時には遅かった。

シンッと静まり返った部内で
私が王子のマンションを知っているということがばれた。

ニッコリ笑った王子は
「じゃぁ、あまり遅くならないうちに来てくださいね。すみれさん」
と手を振って帰っていく。

わざとだ。
絶対にわざとだ。

ノせられた!
あんのエセ王子め!

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