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王子の甘い罠
第6章 罠
「長谷川さん。良い返事をくれて嬉しいよ」
そう言って私を出迎えてくれたのは現地法人の人事部長だ。
「じゃぁ、こっちで詳細を確認しよう」
そう言われ2人で会議室に入った。

数時間後、大体こちらの希望通りの条件でサインをした。
会議室を出ると
すでに就業時間が終わった王子が私を待っていた。

「説明はしてくれるのかな?」

小さいため息とともにそう切り出した王子が
そっとドアを開けてくれたので、そのまま二人で外に出る。

小さな感じのいいレストランに入って
温かな街灯の見える窓際の席で
注文を済ませると王子が再び説明を求めた。

「少し前から、拠点をフランスに移さないか?って
会社に打診されてたの」
「うん」
「立場的には出向扱いになるわ。籍は横浜ホールディングのままだけど。
今でも月の半分はフランスだから。行き来しないで
こちらに重点を置けって事ね」
「そうなんだ」

「ごめんね」
「・・・・なにが?」

「私たちが何の関係もないって言った事」
「・・・・事実だろ」

王子は私に視線を合わせようとしないで
ずっと街灯を見ていた。

「あれから。王子の事が好きだって自覚したの」
「・・・・」
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