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白い背中と君の藍
第6章 アメジスト◇束縛の印
初めて会ったばかりの女性の名前を聞いただけで、胸の真ん中に激痛が走る。

高級感のある香水に酔ったのか、眩暈がしてきた。

とにかくここには今は居たくない――――!!

「鳥羽さん!  大丈夫です!  また今度!」

急いでサンダルをつっ掛けて外に飛び出そうとすると、女性は優雅な動きで身を退かした。

まるで早く帰れと言わんばかりに――――。

「メグ!!」

私の名前を叫ぶ孝秀の声が、後ろ髪を引く。

愛しい人の声なのに、凄く胸が苦しかった。

頭の中にしつこくリフレインし始めるのは――――

『マキコさん』

鮮やかな赤い唇の女の名前を呼んだ彼の声。

「ヒック……孝秀……孝……イヤァァァ――――」

誰もいない川辺まで辿り着くと、自転車を停めて泣き崩れた。

溢れる涙で街灯の光がボヤけている。

彩られた孝秀との思い出も、こんな風に滲んでしまいそうだった。

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