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白い背中と君の藍
第9章 サンドベージュ◇繊細な心
孝秀と会う約束をしてた日――――。

これからアパートに行くのは、少し怖かった。


もしあの日、孝秀のアパートに行かないで、約束していた今日まで待っていたならば、どうなっていただろうか?

孝秀の素性も分からないまま……
眞貴子の肖像画も見ないまま……

ただ孝秀と快楽を貪って日々過ごして行くだけだったかもしれない。

「孝秀のこと……知れて良かったんだよね」

そう自分に何度も言い聞かせていた。

孝秀、怒ってないかな?

また眞貴子がいたらショックだな。

前のように会うのを楽しみにしながらワクワクしていた気持ちは湧いてこない。

緊張と不安でいっぱいだ。

ガシャン……

アパートの敷地に自転車停めて、ドアを見詰めて暫く立ちすくむ。

『メグ!!』――――

いつものように名前を呼んで勢い良く飛び出しては来なかった。

「孝秀……」

もしこれで終わりなら、身体の関係でしかなかったんだ……。

そうなったら痛い勉強をしたと、笑えるだろうか?

「無理……だよ」

誰も聞いてない言葉を虚しく呟くしか出来なかった。

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