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水蜜桃の刻
第11章 その視線


タクシーを拾った。
行き先を告げる。
それは、先生が知らせてきたホテル。


背もたれに寄りかかり、深く息を吐く。


本郷くんからの告白。
先生からのメッセージ。


頭が中がぐちゃぐちゃだった。
いきなり、いろんな事が動き出した。
どうしよう──何を、どう考えたらいいんだろう。

わからない。
わからないのに、今、私は先生のもとに向かっている。


先生……。
どういうつもりで私を呼んだの。
どうしてホテルなんかに私を。


そんな、頭の中でだけ繰り返す問い。
何を書いたらいいのかわからず、返事はしていない。
でも先生のLINEの画面には既読の文字がつき、私がそのメッセージを目にしたことは知られているはずだった。


本郷くん……。


彼の真っ直ぐな言葉。
ストレートに告げられた想い。

       
ぎゅっと目を閉じる。
ホテルに着くまで、ずっとそうしていた。


……ただ胸が、苦しかった。



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