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水蜜桃の刻
第1章 prologue
それは一瞬にして私を支配した。
先生を、先生だと認識した瞬間。
あの、夢のような記憶が私の中を生々しく満たした。
もう朧気になっていた欠片さえ、急にすべて甦ったかのように。
先生に欲情して、欲情されたあの時間。
……それは、私にとって忘れられない甘い記憶。
あのとき先生が見せた表情。
発した言葉。
その抱き方。
それはひそかに想像していたよりも、ずっと。
そう、もっと────。
まさかの再会に、まざまざと思い出す。
10年前を。
16歳の時に交わした、たった一度だけの、先生とのそれを。
抗えず、引きずり込まれていく。
あの、たまらなく甘いのに、どうしようもなく切なくもあった、水蜜桃の記憶の中に────……。