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呪いのしるしを、君の体に。
第4章 4
「そうそう、マニュアルなんだけど
前のハウスキーパーさんが残して行ってくれて。
今取ってくるから今日はそれを読んでおいてもらえる?」
高槻はリビングの先の部屋に入り
何やらごそごそと分厚いファイルを持ってきた。
「はい、これ。
大体が僕の好みと、掃除の仕方。
賢い君ならすぐ覚えられるはずだ」
お茶を出されて、ことりは渡されたファイルをぱらぱらと読み始める。
「それから、さっき僕が入った部屋には入っちゃだめだよ?」
上から、高槻が覗きこんでくる。
その木洩れ日色の瞳は、きらきらと美しく
この男がこの間の鬼畜男と同一人物には思えなかった。
「もし、入っちゃったら…?」
試しに、そう聞いてみると
高槻は柔和な笑みを返してきた。
「その時はお仕置きが必要だね」
「お仕置き?」
「契約違反だからね」
「絶対入りません」
ふふっと彼は微笑んだ。
『もしかして…』
ひっぱたいても怒らないし、ぶしつけな言葉を言っても怒らない高槻に
ことりは疑問を抱いていた。
キッチンに行った高槻に向かって、ことりは何気なく問いかける。
「先生って、実はどМですか?」
振り返った高槻は、まじめな顔でこたえた。
「さあ。どうかな」
そして、貧乏女子大生のことりと、大富豪の文芸家の
奇妙な共同生活が始まった。