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呪いのしるしを、君の体に。
第4章 4
ことりは手が震えた。
しかし、母親と弟、そして、何よりもしょげて生気をなくし
ごめんなと泣いていた父親の姿を思い出す。
『迷っちゃだめだ、この人の挑発に、私は屈しない!』
ことりは深く息を吸い込むと
「100」という数字を書き込み
名前とハンコを完成させて高槻に突きつけた。
「お願いします」
高槻はにこやかにほほ笑んで紙を受け取る。
「また、すごい金額を本当によく書いたね。
これで10万とか書いたら、帰ってもらおうと思っていたから
やっぱり僕の見込みは間違っていなかったみたいだよ」
なぜか高槻はその契約書をうっとりと見つめる。
ことりはまるで自分の裸を見られているような気分になって
恥ずかしくなって下唇をかみしめた。
「じゃあことり君、今日からお仕事をよろしくお願いします。
このお金に見合うよう、しっかり働いてもらうよ」
高槻はことりの顎を持ち上げる。
「な…」
あの時の光景がフラッシュバックして
思わず身構えたことりは
高槻の左ほほに勢いよく張り手を飛ばした。
「ひどいな」
「ご、ごめんなさい…つい、何かされると思って」
「…雇い主をひっぱたかないって、契約書に書いておけばよかった」
高槻は怒ることなく、契約書を持ってにっこり笑うと
キッチンでお茶を入れ始めた。