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呪いのしるしを、君の体に。
第5章 5

「先生、なんですか?」


そこには、ことりの用意した夕食を前に
高槻が座っていた。


「座って、ことり君」
「はあ…」


言われるがままに、高槻のななめ45度の横に座った。


「今日、君が割ってしまったあのグラスなんだけど」
「ほんとごめんなさい」
「もらい物で、結構大切にしていたんだよね」


そう言われて、ことりは気まずくてまともに高槻を見ることができなかった。


「だから、物品を破損した罰として…」


『え、罰?』


ことりは嫌な予感がしたのだが
次の瞬間、手を持たれる。
その手の甲に口づけするかしないかのところで
高槻がことりを上目使いに見た。


「今日は、僕の晩酌相手になってもらおうと思っている」
「晩酌?」


す、と手に口づけをしてことりの手にワインを持たせる。


「君も、飲みなよ」
「私、お酒はちょっと…」
「ダメだよ。罰だからね」


じゃあ、乾杯だけ、とことりもグラスに注いでもらった。
さわやかな香りが鼻をくすぐる。


「乾杯しよう、ことり君」
「はい」


高槻がグラスをことりの方へ傾け、ことりも併せて一口飲んだ。
フルーティーで芳醇な香りが鼻から抜け
後味もさっぱりで、こんなにおいしいワインをことりは飲んだことがなかった。


「もう少し、飲む?」
「いや、でも…」
「はい、遠慮しちゃダメ」


断りきれなくなって、ことりは高槻の隣に座ったまま
ちびちびとワインを飲んだ。
特に会話もないのだけれども
外から聞こえる虫の音に耳を済ませているだけで
贅沢な気分になれた。
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