この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
呪いのしるしを、君の体に。
第2章 2
「え、だれ、その人?」
「知らないの? 高槻忍だよ?」
ことりの驚いた顔に、友人は「しらなーい」とけろっとした顔をしていた。
「ことりはさ、本が好きだからそういうの詳しいけど、私って漫画くらいしか読まないし」
「でも、けっこう有名だよ?」
「知らないもん。それに、いいじゃん、お金もらっちゃえば」
今、この友人とことりが揉めているのは、もらったお金に関してだった。
ふと渡されて、あの時はパニックだったこともあり確認をしなかったのだけれども、よくよく見ると、そこには福沢諭吉がしっかりとプリントしてあった。
「だめだよ、こんなに多くもらったら悪いって」
「だってくれたんだからいいじゃん。返しに行く労力の方が大変だよ」
「わたしは、下手に人に貸しを作りたくないんだってば…」
「じゃあ、ことりが1人で行ってきてよ」
その返答に、ことりは声を詰まらせた。
「もう、ちょっと怖いからあたしは行きたくないし…お金もらったのことりだし」
友人は拗ねるように口を尖らせた。
「律儀なのもいいけどさ、甘えるのことも少しは覚えないと、怜央くんに嫌われちゃうよ?」
「怜央は関係ないでしょうが…」
「それに、あたし、泣き顔見られちゃったから恥ずかしくってやだ」
結局、埒があかないので、ことりはため息を吐いた。
「いいよ。そうしたらユッコはまってて。私が返してくるから」
「うん、お願いね。ありがとうって伝えておいてね」
ユッコはにこりと笑い、ことりはパフェ代を引いたお釣りを握りしめて
またもやあの避暑地へと向かうことになった。
それは、大学3年生の夏休み前。
先日行ってから、3日後のことだった。