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白堊の彼方へ
第1章 その温もり
あの日ずっと繋いだままだった手の温もりが空を見上げると思い出され、ぽっかりと穴が空いた心が少し満たされるような気がするのだ。
「無理して思い出さなくてもいいのよ」
いつも同じことを言う母親に有紗は目を向けた。
「うん。
ありがとう、お母さん」
そう言ってにっこりと笑えば母親は安堵したように微笑み返し部屋を出て行った。
愛想笑いに疲れた有紗は無性に蒼に会いたくなった。
再び空を見ると遠くの方で黒い雲が見えた。
それから暫く蒼に会うことはなかった。
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