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よくある恋愛モノ
第11章 新たな日々へ
その言葉に、凪の顔が曇った
しかしすぐに真顔に戻ると、
「そうか、お前が大丈夫ってんならそれでいい」
できるだけ普通にそう言った
−−−つもりだったが、相手の気持ちに敏感になったのは凪だけではない
「でも、帰りに寄るから」
美和はノートに視線を戻しながら言った
一瞬見せたその表情を見逃さなかったのだ
“あんな傷ついた顔するなんて、反則”
そう思っていた美和は、ふと温もりを感じて凪を見た
そこには、耳を真っ赤にさせながら美和の頭を撫でる凪
美和は何故かそれが気持ち良くて、その手に身を任せて目を閉じていた
「美和……」
凪は小さく名前を呼ぶと、美和の唇にそっと自分のものを重ねる
−−−腹部の痛みに、少々顔をしかめながら。
美和も内心では驚いていたが、瞼が震えただけで目は開かない
その間わずか0,6秒
だが、前回よりも遥かにお互いを感じていた−−−
「ああ、待ってる」
凪は唇を離し、美和の耳元でそっと囁いた−−−
「美和さん?」
昨日のことを思い出していた美和は、いつの間にか星来が隣に並んで歩いていたことにも気がつかなかった
「熱でもあるの?」
その言葉に一瞬きょとんする美和
しかし、なぜそう言われたかすぐに理解した
“凪があんなことするから……っ”
顔が真っ赤になっていたのだ
「ううん、なんでもない大丈夫」
赤面していることを指摘されたため、ますます恥ずかしくなって笑って誤魔化す美和
「ならいいんだけど……和泉くんが怪我して入院したって聞いたから」
その言葉に、美和ははっとする
“そうだ、星来は凪のこと……”