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よくある恋愛モノ
第11章 新たな日々へ
「友達と会えなくなっちゃうんだよ? お見送りは当然でしょ!」
真面目な顔で返されて星来は思わず顔を背ける
「ばっかじゃないの」
その言葉に
「何でいちいち上から目線なんだよ、うぜーな」
凪は苛立ちを隠せない様子
「見送りに来てやってんだから感謝しろよ」
「凪!」
「そっちの方が上から目線じゃない」
「星来まで……」
美和はさすがに呆れた
「しばらく会えないんだから、もっと仲良くしなよ」
「やだ」
「一生会いたくねぇ」
二人の態度にため息をつき、美和は何かを探すように周りを見渡した
「あ、そろそろ時間じゃない?」
「言われなくても」
星来はそっけなく返し、別に名残惜しくもないという感じでその場を後にしようとした
その時−−−
「星来さーん!」
自分を呼ぶ声と、こちらへ向かってくる見覚えのある影
「えっ、なに? 美和さんあの人にも言ったの?」
星来は驚くと同時に、これは本気で嬉しくないという顔をした
「まぁ、ね……えへへ……」
少し申し訳なさそうに笑う美和を軽く睨み付ける星来
「オレ、星来さんがフランスに行くって聞いて、どーっしても言っておきたいことがあるんす!」
「やだ」
聞く気なし
ガシッ
だが今日の寅次郎は少し違う
掴まれた腕を目を丸くして見つめる星来
「星来さん! オレ、星来さんのことが好きっす!」
「ちょっと!」
星来は我に返ると、素早く寅の手を払いのけた
「私、フランスにフィアンセがいるの。気安く触らないでもらえる?」
“……この人にフィアンセって言葉が通じるかしら”
だがさすがにその心配はなく、冷たく突き放され寅は言葉を失っていた
「そ、そんな……」
「それじゃ」
そんな寅をよそに、星来は背を向けて遠ざかっていく
「星来さん!」
最後の望みをかけて−−−