- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
よくある恋愛モノ
第3章 ナギサ
そう、なぜこんな時間にこんな場所で学年も違う3人がこそこそやっているかというと、(本人たち曰く)凪を見守るためである。
……ようは
“抜け駆けすんなよこのアマ”
ということなのだが。
平たく言えばファンクラブ。
「一年生代表、田中奈桜さん!」
「はいっ!」
呼ばれた子は警官顔負けの敬礼をする。
「高校1年2組、和泉凪の呼び方は!」
「一年、和泉くん、二年、凪くん、三年、凪、ですっ! 中学生はその名を口にすることはできませんっ!」
「そう、そして二年生代表、鈴木愛理さん!」
「はいっ!」
「『和泉凪を守る会』の基本三ヵ条は!」
「一つ、凪くんに近付きすぎないこと! 一つ、話し掛けるときは常に2人以上で! 一つ、凪くんの個人情報はくれぐれも内密に!」
「それに反する者はこの私、三年生代表、佐藤絵美が会長の権限を以て退学とします! 会員全員で凪の健全な心と体を守っていくのです!」
たかがファンクラブの会長にそんな権限はないし、不良という段階で健全な心といえるのか甚だ疑問ではあるが−−−
他生徒がとっくに下校した学校の前で、会長を賞賛する拍手が空しく響いていた。