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よくある恋愛モノ
第4章 嵐に呑まれて
一年生代表の田中奈桜が玄関から出てきた美和に声をかけた。
「そうですけど……?」
「ちょっと来なさいよ。大切な話があるから」
見知らぬ先輩に脅すように言われ、美和は戸惑いを隠せない。
「私これから用事が……」
「あんたの事情なんてどーでもいーの」
「とにかく来て下さい」
2人の有無を言わさぬ態度に、美和はしぶしぶついていく。
連れてこられたのは面談室だった。
美和は知らなかったのだが、この面談室としては少し広めのこの部屋は勉強会と称したファンクラブによく使われていた。
中に入ると、一人の女子生徒が窓の方を向いて立っている。
「会長、連れてきました」
「ありがとう」
“会長”と呼ばれた女生徒が振り向く。
「あなたが川本美和さんですね?」
「まぁ、そうですけど」
「とある人からの報告で、あなたが凪の心を著しく乱していると聞きました。これは学校の規律を乱す行為です。分かっていますか?」
「え、ちょっと待ってください。何で凪が関わるんですか?」
その言葉に二年生の愛理が鋭く反応する。
「あなた今、『凪』って言った?」
「言いましたけど……」
「一年生は和泉くんって呼ばなきゃいけないんですよ? 図々しいじゃないですか」
すかさず奈桜も続ける。
「そんな変な決まりごと知りません」
「この学校の生徒としての常識です」
会長の言葉に美和は呆れて言葉を失う。