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よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
キーンコーンカーンコーン…
「夏休みだぁー!」
「ちょっとさ、課題多すぎない?」
「ねー、いつ遊びに行く?」
今日は終業式
成績も渡され、クラスは解放感に包まれる
「星来、今日一緒に帰らない?」
「え?」
美和の発言に、星来は戸惑った
そんな誘いを受けることが今までなかったのだ
「いや、でも私……」
「美和」
星来の後ろから凪が現れる
「……」
美和は例によって終業式をサボった凪を無視する
「あ!」
しかし、すぐに何かを思い出したように手を叩いた
「私、図書室で調べ物があるんだった! ごめん、2人で帰って!」
「あ、おい!」
凪が呼び止める暇もなく、美和は走って行ってしまう
「美和さんて……鈍感」
ボソッと呟いた星来を一瞥すると、
「お前、1人で帰れ」
そう言って凪は美和を追っていった
“どっちにしても、車で迎え来てるんで”
美和は書庫の高いところにある本に手を伸ばす
美和はかなりの読書家で、図書室に用があるというのもあながち嘘ではなかった
「う……ん」
美和の身長では2メートル以上もある本棚の上の方には手が届かない
いつも使っている梯子も見当たらず、どうしようかと悩んでいたとき−−−