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よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
貸すわけが−−−
なかった−−−
のだが−−−
「美和さんのことなんだけど」
その言葉に、凪がピクリと反応する
「……なんだ」
凪は不機嫌な顔のままゆっくりと振り向いた
「このままでいいの?」
「……なにが」
“わかってるくせに”
星来はため息をつく
「迷惑なの、ああいう態度取られると」
「だからなんだ。俺にどうにかしろってのか」
「だって凪くんが好きなのは美和さんでしょ」
その言葉を聞いた瞬間、凪の耳が真っ赤になった
「なんでてめぇの指図受けなきゃいけねんだよ! 人頼んなきゃなんもできねぇんだな!」
凪は荒々しく人混みを抜け、そのまま見えなくなる
「めんどくさ……」
星来はそう呟くと、携帯を取り出した
「あ、美和さん? 悪いけど先帰るから。和泉くんは先に……うん、大丈夫、あたりまえでしょ。迎え来てるから。え? 無理、残りは全部ヨーロッパ旅行だから。また9月に」
しばらく話して電話を切る
そして星来はもう一度電話をかけ、ワンコール聞いてすぐに切った
するとどこからともなく祭りには不似合いなくろずくめの男が現れる
「お疲れ様、これ差し入れ」
「ありがとうございます」
執事はたこ焼きを受け取ると、お嬢様をエスコートして人混みの中に消えた