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よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
ピーンポーン
ガチャ
夜8時−−−
凪の家のインターホンが鳴り、鍵が開けられる
「ただいまー。お兄ちゃーん?」
陽菜乃が呼び掛けるが、いつものように返事はない
だが下駄も靴もあるところを見ると、家にはいるようだ
「お兄ちゃん、陸にぃなら途中であった友達と飲みに行っていないよー、大丈夫だから出ておいでー」
などと、子供をあやすような言葉を並べてみる
「……美和ちゃんいるよー」
ガチャ
“犬みたい(笑)”
“美和”という言葉に反応して出てきた凪を見て、陽菜乃はクスリと笑う
「きゃっ……」
その隣では、美和が小さく悲鳴を上げていた
浴衣のまま寝ていたのか、前がはだけ、逞しい胸板が顕になっている
下半身はしっかり隠れているので、別に悲鳴をあげるほどのものではないのだが、男女合同のプール授業がなくなって久しい女子高生には刺激が強すぎたのかもしれない
「なんの用だ」
そんなことは気にしない凪は、イライラしながら美和を見た
「なんか、お兄ちゃんが……」
「黙れ」
凪に睨まれて、聞かれたから答えたのにと頬を膨らませる陽菜乃
「じゃあ後はお二人でどうぞ。部外者は立ち去りますよーっだ」
そう言って自分の部屋に入る
そして訪れる沈黙−−−
「……」
「あ、あのっ」
“やだ、凪相手になんで緊張してるの”
美和は凪が自分を見る瞳に違和感を覚えた
苛立っているわけではない
なにかに酔っているような−−−
夢を見ているような、恍惚とした瞳−−−