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よくある恋愛モノ
第8章 伝わらない気持ち
立ち止まっていると気が変になりそうだ
美和はカバンを掴むと一目散に駆け出した
だが美和は忘れていたのだ
この先にもっと大きな地雷があることを−−−
「はぁ…はぁ……っ」
全速力で走った美和は、正面玄関でぴたっと立ち止まった
校門に人がいる−−−
見覚えのある後ろ姿が−−−
視線を感じたのか、その人物が振り向いた
「美和?」
凪が、今最も会いたくない人がそこにいる−−−
「どうした? 何かあったのか?」
凪が怪訝そうな顔をして近付いてくる
本気で心配するようなその表情に、美和は怯えて後ずさった
「別に…何もない……」
「何もないって感じじゃないな」
凪が手を伸ばす−−−
触れてしまう−−−
私に−−−
パンッ
「触らないでっ!」
美和は凪の手をはねのけて叫んだ
凪は驚いて目を見開く
「こ、こんなところダラダラしてないで、さっさと家に帰んなさいよ!」
美和は自分の戸惑いや不安を精一杯凪にぶつけようとした
「いや、だからお前を待ってて……」
美和がはっと息を呑む
勘違いではなかった
本人の口から聞いてしまったことはもう取り消せない
“凪は、私を……”
「……そういうのやめて!」
「美和!?」
自分を押し退けて走っていく美和を、凪は茫然と見送るしか術がなかった−−−