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よくある恋愛モノ
第9章 不安
私しか注意できるような人がいないから……?
凪はそれが分かっててあんな態度取ってたのかな……
“私だけ…に……”
「あーー……」
美和は再びベッドに倒れこむ
これでは埒が明かない
認めたくないだけで、分かっているはずだ
凪のことが好きかどうかはわからない
だけど、好きだと認めることで何かが崩れてしまうかもしれない
“私はそれが怖いんだ”
今まで一緒に過ごしてきた時間が、“好き”と自覚するためだけのものだったと
そんな風に思いたくないから−−−
……もう考えまいと眠りについたはずだ
“なのに何故俺はあいつの夢を見る?”
それは、幼い頃の思い出だった
美和が乗っていた三輪車を無理やり奪った
あいつが泣き出して、俺は誰かに見咎められるのが嫌で、必死にあいつをなだめて
女子はすぐ泣くから嫌いだ
心の中ではそう思っていた
“こんなことを憶えていたのか”
自分でも驚くほど遠い、遠い記憶−−−
まだ恋愛感情などなく、無邪気だったあの頃
それを今思い出した
“俺は、いつから……”
そんな感情、持ったこともなかったはずだ
あいつはそういう対象ですらなく
ならば何故、昔の夢を見る
自分でも気がつかない内に……?
「そんなはずはない……」
そうだ、惑わされるな
己の感情に流されるほど俺は弱くない
“そして、この感情もそんな甘いものではないんだ”