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よくある恋愛モノ
第9章 不安
失うものなど何もない
恐れることもない
“あの時もそうだった”
ひとしきり泣いたあと、三輪車を奪ったことを許した美和
“諦めるくらいなら無理矢理奪ってやる”
きっと、また−−−
だが結局、10月に入るまで2人きりで顔を合わせる機会はなかった
相変わらず授業に出ない凪と、授業が終わったらすぐに現れるであろう凪を避ける美和はすれ違う
“こんなことしてたってしょうがないのに”
そう思いつつも、美和は凪に会いたくなかった
凪も凪で、家まで押し掛けたり、また美和の委員会や部活を待つわけにもいかない
だが我慢は限界にきていた
好きだと思う前でさえこんなに長い間話さなかったことはない
“美和……”
腕で日射しを遮りながら屋上のベンチに寝転び、凪は心の中で何度もその名前を呼ぶ
その度に心臓が激しく脈打つ
“…っ……”
凪は立ち上がり、苦しみを消そうとするかのように屋上を後にした
「ん…しょ……ふぅ」
もうすぐ文化祭
美和は彼のことを考えないようにいつもより精力的に動いていた
“重いな…エレベーター使おうかな”
道具を運ぶため、美和は先生に使用許可をもらうと下行きのエレベーターを待つ