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よくある恋愛モノ
第10章 そして、確信
美和は寄り道などしないだろう
そして途中までは友人と帰っていることを凪は知っていた
つまりアパートのすぐ近くで攫われたことになる
“家の近く……?”
そう思いついたとき、凪の脳裏にある記憶が浮かんだ
“道端で女に絡んでいた3人組……”
いつだったかは思い出せないが、確かにそういうことがあったのだ
そして、それはどこか確信があった
“美和はそこにいる”
凪は全速力で駆け出した
今までの美和の記憶が、頭に浮かんでは消えていく
“美和……っ”
美和はギュッと目をつぶった
“凪……来ちゃだめ…お願い……”
来れば間違いなくリンチされる
自分のために傷つく凪はもう見たくない
“来ないで…っ…”
ゴウン…
扉が開く大きな音がして、美和は目を開けた
「美和!」
あぁ……
“馬鹿……っ”
そう思うと同時に、美和の中には安心感が広がっていた
「あ? なんだよ、やけに早かったじゃねーか」
「馬鹿が隠れる場所なんざ簡単に分かるんだよ」
「んだとこの!」
凪の言葉に、チンピラはいきり立った
凪はそれを遮ると、
「美和に手ぇ出してねーだろうな!」
と怒鳴る
「……ほら、ここだよ」
リーダーは美和の髪の毛を掴むと、凪に顔が見えるよう持ち上げた
「んっ…」
美和は苦しそうに顔を歪める
口には再びガムテープが貼られていた
「良かったねぇ、美和チャン。凪クン迎えに来てくれたよぉ?」
チャラ男が美和の顔に触れようとしたそのとき、
「触んな!」
凪はそう叫んでいた
「あ?」
見ると、ものすごい形相で睨み付けている