- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
よくある恋愛モノ
第10章 そして、確信
「じゃあさっさと来いよバカが」
イラついた声が割り込んできた
“……こいつがリーダーか”
そう思わせるものだった
「今から1時間以内に来ねーとこの女どーなってもしらねーからな」
「……声聞かせろ」
その要求は、無事を確認すること以上に、ずっと聞いていなかった美和の声を聞きたいという凪の強い思いが込もっていた
「はぁ? めんどくせーな」
リーダーの男はそう言いつつ、縛られた美和の元へ行くと口のガムテープをはがした
「ほーら、美和チャンの大事な大事な凪クンだよー」
チャラ男が囃したてる
「凪! 来なくていいから! 来たら許さないからね!」
「うっせー黙れ」
リーダーがそう言って蹴りつけると、美和はウッと息を詰まらせた
「おい! 美和!」
それを察した凪が必死で呼び掛けるが、男は構わず電話を切る
「あ、そういや場所言うの忘れたわ」
リーダーはまるで今思い出したというように呟いた
そして美和の方に向き直るとにやにやしながら言い放った
「凪クンは迎えに来てくれるかなぁ?」
凪は切れた携帯を見つめながら頭をフル回転させていた
“あいつらの目的は俺だ……なら1時間という条件も難しいものではないはず……”
チンピラがアジトにしそうな場所を頭の中で並べていくが、残念ながら恨まれる覚えが多すぎて特定できない
“落ち着け……”
相手はおそらく3人……
わざわざ人質を取るということは、俺がかなり圧倒的に負かしたということだ