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白日夢の断片【超短篇集】
第15章 人魚姫 〜村娘side story〜
早朝の誰もいない筈の海岸
何かが落ちている
近付いてみると
それは、倒れた男の人だった
なんて高貴な顔立ちなんだろう……
寂れた村で、今まで見たことのない種類の男
胸が、高鳴る……
抱き起こした途端
男が息を吹き返した
「貴女が…命を救ってくれたの?」
咄嗟に頷いた
暫くして
彼との再会が果たされた
信じられない……!!
彼が、隣国の王子様だったなんて!!
けれどそこには……隣にぴたりと寄り添う女
「彼女は……妹みたいなものだ」
身寄りのない、口のきけない女
脚取りも覚束ない
王子様は気付いていない
あの女がどんなに熱い瞳で貴方を見つめているか
話しかけられて嬉しそうに笑うのか
手を差し伸べられて頬を紅く染めるのか
あの女はいつでも皆の注目の的
好奇心旺盛で
心優しく
そして、美しい……
王子様
貴方が見るのは私……
私を、見て……?
負けない……
負けない……
あの女には……
絶対に、負けたくない……
「王子様、お忘れではありませんか?
王子様の命をお救いしたのは、私……」
王子様からの求婚の言葉
やったわ……
勝った……
勝ったわ、あの…女に……ふふっ、ふふふふっ……
顔を青褪め、去っていく女……
さぁ、これで邪魔者はいなくなった
新婚旅行に向かう船室
王子様からの寵愛を一身に受け
幸せに満たされる身体のまま
眠りについた……
真夜中
そっと忍び寄る足音
扉が静かに開く
そこから覗く鋭利な光に
息を呑み
身体が硬直する
声が、出ない……
王子様の傍に立ち
短刀を振り上げる女……
けれど……
それは、金属音と共に床に投げ付けられた
逃げて行く足音
王子様が目を覚ます
短刀を手に取り
ハッとしたように飛び出して行く
女は既に海の泡と消えた……
勝った……
勝ったのだ……
ふふっ、王子様は完全に私のもの……
それから
王子様は塞ぎ込むようになった
虚ろな瞳
彷徨う視線
項垂れる肩
ぽつりと呟く
「気付いたんだ
僕が本当に愛していたのは、誰だったのか……」
あの女は王子様の心を奪っていった
抜け殻だけ、残して……
何かが落ちている
近付いてみると
それは、倒れた男の人だった
なんて高貴な顔立ちなんだろう……
寂れた村で、今まで見たことのない種類の男
胸が、高鳴る……
抱き起こした途端
男が息を吹き返した
「貴女が…命を救ってくれたの?」
咄嗟に頷いた
暫くして
彼との再会が果たされた
信じられない……!!
彼が、隣国の王子様だったなんて!!
けれどそこには……隣にぴたりと寄り添う女
「彼女は……妹みたいなものだ」
身寄りのない、口のきけない女
脚取りも覚束ない
王子様は気付いていない
あの女がどんなに熱い瞳で貴方を見つめているか
話しかけられて嬉しそうに笑うのか
手を差し伸べられて頬を紅く染めるのか
あの女はいつでも皆の注目の的
好奇心旺盛で
心優しく
そして、美しい……
王子様
貴方が見るのは私……
私を、見て……?
負けない……
負けない……
あの女には……
絶対に、負けたくない……
「王子様、お忘れではありませんか?
王子様の命をお救いしたのは、私……」
王子様からの求婚の言葉
やったわ……
勝った……
勝ったわ、あの…女に……ふふっ、ふふふふっ……
顔を青褪め、去っていく女……
さぁ、これで邪魔者はいなくなった
新婚旅行に向かう船室
王子様からの寵愛を一身に受け
幸せに満たされる身体のまま
眠りについた……
真夜中
そっと忍び寄る足音
扉が静かに開く
そこから覗く鋭利な光に
息を呑み
身体が硬直する
声が、出ない……
王子様の傍に立ち
短刀を振り上げる女……
けれど……
それは、金属音と共に床に投げ付けられた
逃げて行く足音
王子様が目を覚ます
短刀を手に取り
ハッとしたように飛び出して行く
女は既に海の泡と消えた……
勝った……
勝ったのだ……
ふふっ、王子様は完全に私のもの……
それから
王子様は塞ぎ込むようになった
虚ろな瞳
彷徨う視線
項垂れる肩
ぽつりと呟く
「気付いたんだ
僕が本当に愛していたのは、誰だったのか……」
あの女は王子様の心を奪っていった
抜け殻だけ、残して……