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白日夢の断片【超短篇集】
第4章 憎い女
最後の恋だと思った……
この男を
絶対に逃したくないと思った……
幸せ、だった……
愛する男に愛されて……
永遠の愛を、誓ってくれた……
あの女が狂わせたのだ
私の、男を……
張りのある瑞々しい肌を晒し
無邪気を装った笑顔を見せ
鼻にかかる甘い声で話しかけ
若さ特有の匂いを撒き散らし
男の肉欲を少しずつ引き出していく……
男が
私を遠ざけるようになった……
目を逸らし
言葉数が減り
肌が触れ合うのを避ける……
あんなに
『愛してる』と言ってくれたのに……
永遠の愛を……
誓いあった筈なのに……
あの、女だ……
あの女が、
私の男を、狂わせた……
どんな手で、誘惑したの?
どんな言葉で、囁きかけたの?
どんな身体で、溺れさせたの?
憎い…
憎い……
憎い、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い……
激しい憎悪で
身も心も焼き尽くされる
甘ったるい声で……
男を誘惑したその、声で……
『お母さん』だなんて、
呼ばないで……