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rena's world story★a.n.r.r.y
第9章 message
「……蓮」
俺の右手を握っていた両手を、瑠璃がそっと離した。
促すように名前を呼ばれたけど、涙が止まらなくて顔を上げる事が出来ない。
……それでも
ステージを照らしていた照明が、俺の方に向けられて
ゆっくりとその足音が近付いてくる。
「………っ」
会場中が温かい拍手に包まれる中、なんとかソファから立ち上がると
誰もが皆涙を浮かべて、笑顔で俺を見つめていた。
美和に再会して、唯一自分の心情を話していた瀬名も
……その瞳に、輝く光が溢れていた。
「泣き虫」
宝物が入った箱を、しっかりと両手で抱えて
俺の前に立つと、ヒメが白い歯を見せて笑う。
「中野がどっちを1位にしたかは知らねぇが
これで俺のいい男って称号は不動のものになったな」
勝ち誇った顔でも……その目は赤くて、
声も掠れていて、少しも説得力がない。
「……うるせぇよ。
お前だって泣いてんじゃねぇか」
「はは、口悪いな」
「……てめぇのせいだろ」
「俺じゃない、 “ こいつら ” のせいだ」