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rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で
「着ろ」
「………!」
「風邪引くぞ」
ラタン材で出来た、2人掛け用の細長いガーデンベンチ。
1人で座っていた私の肩に、ふわりとスプリングコートが乗せられた。
「メインダイニングに放置してあったってよ。
優香が持ってきた」
「……! す、すみません…」
「まぁ、着なくても別に寒くねぇけどな」
「………」
そう言った彼のジャケットも、右腕にかけられていて
反対側の手にはロックグラスが握られていた。
……カランと氷を鳴らして、姫宮さんが私の隣りに座る。
「すげー、この場所。
下のオープンデッキが丸見えじゃん」
「……はい」
「マジでいい眺め。
上流階級の貴族はこんな気分なんだろーな」
アイアン調のスタンドテーブルにグラスを置いて
前に身を乗り出した姫宮さんは満足そうに笑った。
彼が言った通り、私達のいる最上階は船のトップデッキ。
ここから1つ下がった4階が、船首に繋がる大きなテラス席になっていて
食事を終えた乗客のほとんどが、そのオープンデッキに集まっている。
……そう、つまり
私と姫宮さんは、最上階から彼らを見下ろしているのだ。