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rena's world story★a.n.r.r.y
第18章 月灯りの下で
え? 回ってる?
「姫宮さんも酔ってるんですか?」
「なんつーか、この揺れる感じに器官がやられる」
「……全然揺れてませんけど」
小型ボートじゃないんだから、と思いつつも
私の心臓は今でも早い鼓動を繰り返していて……体が熱い。
“ 今回はマジで何もねぇから ”
“ 作戦も戦術も無いって意味。ただ、見物するってだけだ ”
「………」
姫宮さんが事前にそう言っていたように
お嬢様と向かい合う葵の背中を、離れた席から眺めていただけ。
よく考えなくても、後方から覗くだけでは2人の会話なんて聞こえるわけないし
乗船前にバレてしまったわけだから
イケメンの相棒と高級クルーズディナーを楽しめばそれで良かったんだ。
……だけど
「ごめんなさい、姫宮さん」
グラスに半分残ったカクテルを一口飲んで、静かにそう告げた。
足を組んだ彼が、いつになく大人しい私に顔を向ける。
「なにが?」
「……最後、デザートのビュッフェがあったのに
無理矢理終わりにして出てきてしまって」
「………」
「香月さんから甘党って聞いてたのに……ごめんなさい」