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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
駐車場から木製デッキの道を数十メートル進んだ所に、展望台があった。

相沢圭司は、階段のある所を歩く度に、私を気遣い、振り返りながら歩いてくれた。

展望台からはまさに太平洋が一望できた。遮るものは何もない。午後の傾いた日差しが、東側に広がる大海の波に陰影を作り、美しいモザイク画のようにも見えた。

「静香さん、どうです綺麗で雄大でしょう?こういう光景の中にいると、自分の卑小さを思い知らされます。私はなんて小さなことで悩んでいるのかなんて…。海は私たち生命の源ですから、いうなれば、静香さんにとっても、私にとっても魂の母みたいなものです。」

「そうね。とても綺麗で大きい…地球が丸いのも、水平線を見てるとわかるわね。相沢はこういう景色を見て育つたの?」

「はい。ここではありませんが、海に近い町で高校まで育ちましたから…。嫌なことがあったり、悩んだりしたら、いつも海を見に行きました。例え台風が近づいていても…海はいろいろな顔を持っていますから、いろいろ学びましたね。まだまだ未熟ですけれど…。」

「そんなことないわ。相沢はとても立派だわ。相沢がいなければ、父は当選してないでしょう?前回だって、秘書の働きと党幹部の応援がなかったら、野党候補に負けてたかも知れないじゃないっ。」

「いいえ、山川先生はご立派な議員ですよ。私は尊敬しています。それを全国民に知っていただき、山川先生を国会に送り出すのも、私たち秘書の仕事です。」

だんだん陽が傾いて来ていた。

海は夕凪だったが、涼風が帽子を取った、私の髪を揺らした。

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