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あるマンションでの出来事
第2章 変わり始める
茉莉は起き上がり、後ろから佐伯を抱き締めた。
この男は何かを知っている、それが何かを知りたい茉莉は、佐伯の背中を人差し指でなぞった。ゾクゾクとする感覚が佐伯の体をビクつかせる。
静かに振り向き、茉莉を見た佐伯は、茉莉の細い腕を掴み再びベッドに押し倒した。



「散々体を重ね合わせたのに、まだ足りないの?」

「それは佐伯さんの方じゃないの?」

「誘ってる?」

「さぁ…」



互いの顔の距離は数センチ。少しでも動けば再び熱い時間が始まりそうな雰囲気だ。けれども、茉莉も佐伯も微妙な距離を保ったまま動こうとしない。
駆け引きが始まろうとしていた。



「……佐伯さん、あなたは何を知ってるの?」

「知ってる?何を?」

「それを聞いてるの」

「何も知らないよ。俺は俺が知ったことが真実かどうかは自信がもてない。だから、知らないとしか答えようがないんだ」

「じゃぁ、佐伯さんが知っていることを教えて」

「それはできない」

「どうして?」

「これは自分で気付いて、自分で知って、自分で進んでいかなきゃ終わらないんだ」

「どういうこと?」

「俺が言えるのはそれだけ」

「……意地悪ね」

「茉莉にそう言われるのは辛いな。ごめん」

「謝るなら、ちゃんと話してよ」

「これでもちゃんと話してるよ。これ以上は茉莉、自分で気付いて欲しい」

「……分かった。じゃぁ、一つだけ…一つだけヒントを頂戴」
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