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いつかは結婚できると思い込んでる私へ
第4章 4
家に帰るともうかなりの時間であった。
迎えてくれた母親の期待と好奇心に満ちたにやけ顔は無視する。
けれどあやみにも一応は親を喜ばせる孝行がしたいという気持ちがなくもない。
その想いを「お風呂はいい」という一言に託して、照れながら自室に戻った。
自分の顔がにやけてると教えてくれたのは、カーテンを閉めたときに映った窓ガラスだった。
「あー……ヤバい……」
こんな顔をして電車に乗り、駅から家まで帰って、コンビニで買い物までして、母親に顔合わせていたんだ。
あやみは反省しつつもまたにやける。
ごろんとベッドに転がったときに背中に固いものを感じた。
「ん?」
手探りでその異物を掴んでようやく彼女のにやけは止まる。
『いつかは結婚できると思い込んでいるあなたへ』の表紙は責めるような文字であやみを見詰めている気がした。