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sunset~君の光になりたい
第15章 恋の駆け引き?
――ヒュン。
空を切る音に振り返ると、ハタキが矢の如く飛んできた。
里沙は間一髪でかわす。
ハタキは楽屋のドアに突き刺さっていた。
投げたのは母ペコのようだ。
「りーさあああ!?何してんのー!ライブが終わってアナウンスのあとにサイン会て段取りなのに!
大森さん自らお客様にMCをしてサイン会を始めてるわよー!
いちゃこらするのは仕事が終わってからにしなさい!か――っ!」
ペコは般若のごとき形相で叫んだ。
「あ!いけない!……ゴメン」
里沙は急いで会場へ走る。
「頑張ってな~!」
武彦の声を背中で聞きながら、顔がひとりでに笑ってしまうのを止められずにいた。
"逢いたかったから"
その言葉を頭の中で反芻する。
言われた言葉が嬉しいだけなのか、彼に言われたから嬉しいのか、里沙自身にもわからなかった。