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sunset~君の光になりたい
第2章 出会いの衝撃
その朝。千波は慌て、不安で一杯だった。
初出勤なのに、寝坊してしまった。
「きゃ――!髪の毛!お化粧っ……」
鏡台の前に立ち、髪をとかしドライヤーをあてて寝癖を真っ直ぐに伸ばし、覚えたての化粧をおっかなびっくり始める。
「変な夢見て寝過ごすなんて……私って馬鹿……」
お客様の前に立つ仕事なのだから、身嗜みはキチンとしなくてはならない。
派手すぎないチーク、淡い色のルージュをひいて、部屋のカーテンを開けてみる。光に自分の顔を当て、メイクが濃すぎないかチェックし、素早く着替えると駆け足で階段を降りて家を飛び出した。
ギリギリ間に合う電車にはどうにか乗れたが、自分の中の順序が大きく狂ってしまった。
吊革に掴まり下を向くと自然と落胆の溜め息が出てしまう。
『――千波、ダメでしょ!悲しい顔をしてたら、楽しい事はやって来ないんだからっ!』
頭の中、親友の里沙(りさ)の叱る声が響いた。
顔を上げ、窓に映る自分をみつめる。
唇と頬の色が明るいだけで、印象がガラリと変わるからメイクの力は偉大だ。