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sunset~君の光になりたい
第9章 恋する夜空
「そうだ、私の指にも結んで下さい」
「ん?これ?」
ヒロは、彼女の左手の薬指にピンクの風船と黄色の風船の糸をくくりつけた。
千波は嬉しそうにゆらゆらと揺れる風船を眺めている。
「星を見ながら、thunderの曲を歌ってたんです」
千波は、深呼吸すると突然口ずさみ始めた。
"あなたの 細い白い指を辿って
絡めあって
僕は何かを探す
永遠の約束なんて出来ないだろう?
だからせめてその頬に
今だけ触れさせて"
千波は澄んだアルトの声で、thunderの『Maria』の最後のフレーズを歌った。
「メロディーも素敵だけど……歌詞はヒロさんが作ってるの?」
笑っているようにも泣きそうにも見えた。
「そうや。thunderには珍しいラブソングやで」
千波はヒロから背を向けて下を向き、消え入りそうな声で呟いた。
「それってヒロさんの……恋愛の事が歌詞になったり……ううん、何でもな……」
言い終える前に、ヒロは後ろから千波を抱き締めていた。
「ヒロさん?どうしたの……?痛い……」
「ごめん」
ヒロは、千波にそう言われても力を弱めず更に強く抱き締めた。
小さな呼吸が指に触れる。
『帰したくない』と、口をついて言ってしまいそうになる。
(――でもダメだ。何故かは解らないけれど、この子には急激に近づいたら傷つけてしまうような気がする――)
この時ヒロは、千波が抱えているものを、全く知らずにいた。