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情画
第1章 再開
実(みのる)を送り出して、そのままインターホンを押していた。

思うことは沢山あるのに、背き合う百合と薔薇の絵に吸い寄せられ、
指は迷いもなくインターホンを押していた。


返事までの間が長く、ワタシは戸惑う。やはり会うべきでないのかも…

「どうぞ、お入りください。いつものように…」

だいぶ間があり先生の声がする。

それだけで胸がいっぱいになるのに、先生の声は特に抑揚もなかった。

『いつものように』ということは、モニターを見てワタシだとわかったからだろうけど…

不安になりながらも門をくぐる。

桜は葉になり、薔薇の香りがする。


ああ、何も変わっていない。

少し安心するとともに八年の時がワタシにもたらしたものを感じた。

当時の先生より3歳も上になり、もうアラフォーという年代だ。

出産を経て、母のたくましさを身につけたワタシが、のこのことお屋敷にくるのは間違いではないだろうか。

でも、お伽噺のような庭の花々に惹かれて、戸惑う足は歩を進めるのだ。

何も変わっていない。
もしかしたら、先生も沙絵さんも変わっていないのではないか?

隔離された空間は時の進行すら止めてしまうのではないか…
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