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星と僕たちのあいだに
第4章 幸福の在りか
第四章 幸福の在りか
言葉にならぬあえぎ声を発しながら、麻衣が二度目の絶頂に達しかけたとき、圭司が果てた。
脈動を終え、力尽きてゆく圭司にしがみついて、麻衣は幸福感に身をひたした。
半年以上、ひとり遊びもしなかった麻衣は、性器にピリピリとした痛みをおぼえたが、それ以上に下腹部に残る行為の余韻を心地よく感じた。
耳元で呼吸を乱したまま、おおいかぶさる圭司を抱きしめ、麻衣は、労をねぎらうかのように圭司の背をなでつづけた。
一生けんめい、抱いてくれた。
そうとわかる圭司のやりかたが、麻衣をうれしくさせていた。
ようやく息を整えた圭司が腕枕に麻衣を抱きなおすと、ふたりの視界に星空が広がった。
『きれいだなぁ』
『はい、素敵でした。とても』
圭司は片手に麻衣を抱いたままクシャクシャになった蒲団を掛け直した。
『うん、たしかに素敵だ』
ふたりはしばらく蒲団の中から星空を眺めた。
静寂のなか、空一面にまたたく星々に見守られ、圭司は今夜の星空に“何か”を約束したような気持ちになった。
愛や絆、いろいろと言葉を浮かべてみたが、“何か”にふさわしいものは思い浮かばなかった。
『ありがとう』
そうつぶやいた麻衣の目が涙でうるむのを、圭司が心配そうにのぞきこんだ。
『どうしたの?』
『うれしくて』
麻衣は照れを隠すように微笑み、涙をぬぐった。
そして『もう泣きません』と言った。
『俺も麻衣に出会えて嬉しいよ。
すべすべで、やわらかくて、
星空みたいに麻衣もきれい』
『私は、星に触れました』
『さわれた?』
『はい、触れたんです。
私、幸せです』
圭司は、幸せ、と口にした麻衣を見つめた。
ゆうべ渡瀬が自分の部屋に来たこと、麻衣をここへ連れてきたこと、部屋がひとつしか空いていなかったことが偶然ではないような気がした。