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第3章 堕ちる女隊長

　そうだ。私はカテリナ・ラ=フェールなのだ。

　全ての思考を集中して現状の打開を考える。

　何か方法があるはずだ。考えろ……何かがきっとある。市民の平和はこれからの自分の行動に懸かっている。あらゆることに思いを巡らせろ。この苦境を脱する手掛かりは……

（そうだ……！）

　カテリナの瞳に光が宿った。思いついた内容に一瞬逡巡するが、意を決してピエルに呼びかける。

「先ほどの約束の話を憶えているか？」
「約束ゥ？　……ああアレか」
「私がお前のものになったら市民に呼びかけると……」
「ああ、言ったな」
「この取引はまだ生きているのか？」
「ああ、いいぜ。お前が俺様のモノになると約束するなら、いくらでも呼びかけてやんよ」

　カテリナは大きく息をつき自分に言い聞かせる。

（これでいい……これでいいんだ）

　その取引が意味する自分の運命……それへの嫌悪を感じながらも、しかし銃士の使命への忠誠心はなお強い。

「……お約束いたします。私はピエル様のものとなりましょう。ですから市民への呼びかけをお願いいたします。高等法院にて裁きを受けると……」

「良いだろう。だが、約束は守られなければならない」
「ならば、我が父の名に賭けて……」
「あっあーッ！　要らねー！　そんなもん屁のつっぱりにもなりゃしねえ！」

（なんという……！）

　父への侮辱にカテリナは頭に血が上るのを感じたが、かろうじてこらえる。

「もっと相応しい誓いの儀式があるだろ？　ロマンチックにいこうや……」