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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第2章 桜の木の下で
「……あなたは……」
私が口を開くと、彼は少しだけ腕の力を緩めた。
「性別は、どちらですか?」
「……は?」
「男の人ですよね?」
「……そうだけど」
「そうですか……」
「何その意味深な質問。
俺、女に見えるの?」
……いえ、そういうわけではないんです。
むしろあなたがどんな顔をして、どんな姿をしてるのかさえ
あなたの胸に突っ伏している、今のこの状況では分からない。
ただ、私は………
「……私、こうして男の人に抱きしめてもらうの
初めてなんです……」
「………!」
さっきまでうるさかった宴会の声が、小さく遠ざかっていって
それを掻き消すかのように、彼の心臓の音がトクトクと響き渡る。
「……だけど
私が、抱きしめてもらいたい人は
たった1人だけなので……」
「…………」
「遼(りょう)くんには
このことは秘密にしてください……」