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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第10章 目撃
「りょ……加賀谷、さん」
バッグを肩にかけて、遼くんのデスクに近付く。
「今から、○○木工に行ってきます」
「○○木工?」
「はい、江東区の事務所に。
ダイニングボードの色見本が上がったみたいなので、見てきます」
午後の2時、アポイントの時間まではまだ少しあるけど
○○木工は駅から少し離れてるから、早く出よう。
遼くんの後ろにあるホワイトボードに、外出のマグネットを貼りつけて
ストールを巻き直して、フロアを出ようとすると
「蓮見」
後ろから遼くんに呼ばれて振り返る。
「道草食ってサボるんじゃねーぞ」
「……! わ、分かってますよ!
てゆーかそんなことしません!」
「ひとつ頼みたい仕事があるから
早く帰ってこいよ」
「………!」
「待ってるから」
遼くんの笑顔で
瞬く間に、トクンと心臓が鳴った。
「気を付けてな」