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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第16章 サヨナラ、春ちゃん
掠れる声を、振り絞って
梯子を降りはじめたユキを呼び止める。
「……っ ありがとう……!」
「………!」
「本当に……あり、がと……っ」
……止まった涙が、また溢れそうになったけど
ギリギリで抑えて、ユキに向けて頭を下げた。
「短かったけど……私、ユキといると楽しくて……
本当に、幸せな時間をいっぱいもらったよ」
「……春ちゃん……」
「……ありがとう。
ありがとうね、ユキ……」
ごめんなさいって、本当はそう言うべきなのかもしれないけど
背中を押してくれたユキに、1番伝えたい想いは
心から溢れる、感謝の気持ちだ。
「……春ちゃん」
ユキが口を開いたので、私は顔を上げる。
「……ひとつ、約束してくれる?」
「……えっ?」
「………」
「……? ユキ……?」
約束って……?
もう一度聞き返そうとした私を見て、ユキは切なそうに微笑んだ。
「……いや、なんでもない」
最後に、そう小さく呟いて
ユキは私の前から姿を消した。