この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
「あんたさぁ。
呑気にコーヒーなんて飲んでていいの?」
そう聞きながら、デスクに突っ伏していた頭をゆっくりと起こす。
「送別会のお店、6時から予約してるんでしょ」
「………」
「他の先生達はみんな行っちゃったみたいだし。
教授も、早く来いって言ってたよ」
両手を上げて伸びをする俺を、チラッと見て
竹中さんは静かにカップをデスクの上に置いた。
「……送別会の予定だったんだけど、単なる “ 飲み会 ” に変更になったわ」
「………」
「主役が急用で来れなくなっちゃったのよ」
「……へぇ」
「あまりにも突然だったから、花束も渡しそびれちゃって
みんなすごく残念がってたわ」
「……そうなんだ」
浅く相槌をうって、コーヒーを口に含んだ。
教授が淹れたのと、大して味は変わらない。
というより、味覚をまるで感じない。
……でも
良かった。
春ちゃん、勇気を出して一歩を踏み出したんだね。
長年の想いを伝えるんだから
少しでも早い方がいい。