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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
……窓を伝って、外から僅かに聞こえるエンジン音。
空を飛ぶその翼を見上げるだけで、姉貴の最後の涙と笑顔がフラッシュバックする。
姉貴の命を奪った飛行機には、一生乗れる気がしない。
……義兄さんと同じ恐怖症を克服させる為に
俺を引きこもりにさせない為に
自らが手本となるように、海外旅行を繰り返す両親。
なんとか救いの糸口に繋げようと、頑張ってくれているけど
心に穴が開いたままの俺の目には
未来はもちろん、明日の自分だって映らない。
……それでも……
「……公園の、桜の木の下で……」
ポツリと呟いた俺に、竹中さんが反応する。
「……桜の木?」
「酔っ払った春ちゃんを抱きしめた時。
俺、久しぶりに生きてるって感じたんだよね」
「………!」
「なぜか分からないけど。
……不思議と、そう思った」