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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
「……だけど、分かってたんだ」
「………」
「春ちゃんが俺のモノにならないってこと
言葉にした時には気付いていて、その時点で諦めてた」
……夕陽が沈んで、デスクライトだけが淡く光る研究室。
思い出話のように、1人で勝手に語り続ける俺の隣りで
竹中さんはただ静かに聞いていてくれている。
「だってさ、春ちゃんから義兄さんの話を聞けば聞く程
ワザとだろってくらいの確信犯なんだ」
「……確信犯?」
「春ちゃんに気を持たせることばっかりしてる。
確実に義兄さんが悪いよ」
……彼氏を作れとか、安心させろとか言ってはいたらしいけど
その言葉と行動が伴っていない。
いくら後輩だからって、会社で名前を呼ぶとか
褒める時に頭を撫でたり
事件があったとはいえ、無意識のうちに抱きしめたり
愛妻家の既婚者がする言動のレベルを超えてるよ。
ましてや、春ちゃんが自分のことを好きだって気付いてるんだから
もう色んな意味でアウトだっつーの。
……でも、それは
クールで感情を表に出さない義兄さんが
それだけ春ちゃんに心を惹かれている証拠の他ならない。